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2011年11月 5日 (土)

今後のチーズ製造についてのお知らせ

「ミルク工房レプレラ」を開いて、11月3日で3周年を迎えました。

周りの農家仲間や地元の方々、飲食店など食に携わる方々、そしてチーズを買ってくださった方々…たくさんの人に支えられ、大きな問題もなく、順調にチーズを作リ続けることができました。

感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます!

ここで今後のチーズ製造に関して、皆様にお知らせがあります。

当牧場は家族経営で、今は父が酪農業を経営し、僕はチーズ製造を主とし、酪農業はサポートという役割でした。

チーズ製造にウエイトを置くことで、自分の製造に合った、うちのミルクに合った、せたな町の風土に合った、お客さんの「食べたい」に合わせたチーズを模索し、研修や試作を繰り返し、さまざまなチーズを作りながら3年が過ぎました。

特に今年に入ってから、販売の面や、作るべきチーズのビジョンが見えはじめ、これからさらにもう1ステップ先へというところでした。

その中、9月に製造した熟成チーズが「酪酸菌」という、セミハード・ハードチーズの熟成を阻害する菌が発生し、すべてのチーズがガス膨張し出庫不可能になってしまいました。

酪酸菌は、サイレージ(発酵飼料)などに見られる土壌菌ですが、チーズなどの発酵食品に入ると劣化の原因となる菌で、耐熱性があり、生乳の殺菌では死滅せずにチーズに移行し、熟成2か月目くらいからガスを生成して異常膨張するというものです。

自分の失敗を公開するのは、少し抵抗がありますが、でも現状を伝えるため、その酪酸発酵したチーズの写真を載せます。

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原因はミルクの中に酪酸菌が混入したためです。

酪酸菌がいるサイレージを牛が食べても、それが体内を通りミルクに菌が移行することはないと言われています。牛舎内に酪酸菌がいることで、搾乳中にミルカーが空気中より吸い込んだり、ミルクの輸送の際に混入したり、搾乳環境により混入することになります。

当牧場は冬以外は昼も夜も放牧するため、牛舎内に牛がいるのは搾乳するときのみになりますが、その搾乳中に乾草またはサイレージを与えます。

今年6月の牧草収穫(1番草)では、晴れの日が続かなかったため草が乾かず、すべてサイレージで収穫しました(サイレージは青草を半乾きにして収穫する)

放牧期は極力乾草を与えるよう努めていますが、昨年の乾草が無くなってからは今年収穫した1番草のサイレージを与えていましたので、それが原因かと思います。

当牧場の生産しているミルクの9割以上はホクレンを通して函館の北海道乳業に出荷しています。

牧場内でナチュラルチーズとアイスクリームに加工しているミルクは1割にも満たないもので、牧場の主たる収入は生乳出荷となりますので、チーズの都合のために酪農業を大きく方向転換することはできません。
(その中でもジャージー種やブラウンスイス種を導入したり、飼育管理でも加工のための生産努力はしてきました)

この酪酸菌問題の対策としまして、酪農業の面でできることは

・搾乳環境の改善
・生乳の自主検査

チーズ製造業でできる対策は

・熟成温度を下げる(低い温度では酪酸菌が発育しにくい)
・酪酸菌の影響を受けにくいチーズを作る(セミハード・ハード以外のチーズや、チーズ内に塩を混ぜてから型詰めするセミハードチーズ)
・硝酸塩などの有用添加物の使用

対策を挙げて自分がこの先どうするか考えました。

3年間、なんだか駆け抜けるように過ぎ去って、ふわふわと安定しなかったことろが正直ありました。

この失敗をきっかけに立ち止り、地に足の着いたチーズを作る農民になるための次のステップへと進みたいと思います。

そのために、勝手ではありますが来年の放牧期を迎えるまで、モッツァレラ以外のチーズの製造お休みいたします

(酪酸菌の影響を受けにくいチーズの試作は数回行います。予定ではチェダータイプをウォッシュタイプを試作します)

そしてこの3年間、チーズをメインとしていたため酪農業の方の勉強や経験が不十分なのも実情です。いづれ訪れる酪農業の後継のため、そちらへの時間も作りたいと思っていたので、これを良いきっかけに、冬の間に勉強ししながら、酪農面の酪酸菌対策も進めていきたいと思います。

チーズ面での対策の熟成温度を下げるのは、今の設備での冷却では、夏場に少し温度が上がってしまいます。

しかし酪農面でも言えるのですが、ハード面に対しての設備投資は、小規模の当牧場では投資のリスクが大きく、経営に無理がかかったり、チーズの値上げにつながったりしてしまいますので、酪酸菌対策にハード面などへの投資よりもまず、さまざまな工夫やアイデアで手間をかけて改善していきます。

また、他のチーズ工房さんの製造を把握しているわけではありませんが、酪酸菌対策に硝酸塩を使うケースもあります。

しかし、原料のミルクから生産を一貫しているなら、添加物に頼らずともチーズ製造できるミルクの生産をするポリシーを持って努めたいと考えています。

また、今までさまざまなチーズを模索して作っていきましたが、来年の放牧期に再開する熟成チーズの製造では、主力で作るチーズを見定めて作る予定です。

それは今まで数回製造し販売もした、フランスのコンテやボーフォールをモチーフにしたハードチーズ「カリンパ」を1年以上熟成して作ります。

今、15ヶ月熟成のカリンパが熟成庫にあるのですが、この味がうちのミルクやここの風土に適したチーズの出来だと感じています。

村上牧場の良さが詰まったオンリーワンなチーズをつくることを目標に、より集中したものづくりに取り組むため、今後の計画といたします。

当牧場のチーズを食べてくださっている皆様には、とてもお待たせすることになりますが、

本格的に熟成チーズの販売ができるのは再来年の春以降になりますことをご理解ください。

生産を止めることは、作ることより勇気がいることですが、

この決断ができたのは、たくさんの支えてくださっている方々のおかげです。

3年間で得た大きなものは、自分に素直に良いチーズ作りに向き合えば、周りの皆さんがそれに嬉しいリアクションを返してくれることです。

だからこそ、このように一時休止しても、そんな皆さんがいればきっと大丈夫。そう信じて、次のステップを踏み出します。

どうか今後とも変わらずに村上牧場とともにお付き合いいただければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

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